THE WRONG GOODBYE

ひと昔前、マンハッタンには名無しのオプ*1がいて、横浜には非番の警官「二村永爾」がいた。2人とも余計な口はきかず、自分の領分を知った大人だった。田舎者で腕っ節の‘う’の字も持ち合わせない私にとって、彼らは銀幕の星だった。でも、いつしか私は彼らの存在を忘れ、気付いてみると彼らの年齢を越えていた。私はビール風アルコール飲料に酔っぱらい、生協の1パック105円のアーモンドフィッシュを肴に税金でのーのーと*2生きている公務員や、倒産しつつも高い給料を懐にしている銀行家*3にグチグチと届かない厭味を言い、家のローンをどうやって繰上げ返済するかと言う事しか頭に無いサラリーマン生活にどっぷり馴れきっていたのだが、二村永爾はもっと悲惨な人生を歩んでいた(んだろうな…笑)。横浜の自動車は、ブラジル出身の経営者とトラックメーカー出身のデザイナーによって単なる安全で大塚家具のソファー並みのおしゃれ度を持つ安楽椅子となり、山手だとかドブ板とか大根の産地だとか*4そんな事はどうでも良い世の中になっても彼は生きていた。それは、日本の余寿命が世界でもっとも永く、彼が日本の公務員として任務を全うしていると言う結果に過ぎないと言う意味だった*5。仕方なく、彼はドイツの国民車メーカーが勘違いして掃除機のような音を立てる補機をくっつけた車に中古で乗って、日々引き際を求める人生だったのだろう。*6。彼は「ガルベス君」が「ビリー君*7」に替わっただけ。おまけに、余計なスクリプトだけはクダクダと細かく、昔ながらの読者は読む事を停止するのを前提とした世界の中で、中年になって緩んだ身体*8をもてあまし、ただ、主人公だからと言う理由だけで1冊のハードカバーのページ数を生き延び、己の存在に終止符を打つという行為を完結させられた。確かに最後は「THE WRONG GOODBYE」と言うタイトルにふさわしい終わり方だった。中古で¥950で買ったことだけが救いだった。さよなら、矢作俊彦。あんたの本は全部BOOK OFFに持ってく事に決めたから*9。。。

*1:探偵

*2:あんたらの苦労は実業じゃないですから

*3:はっきり言うとアシカの銀行

*4:コールハーンだとかシアサッカーのトラウザースだとか…

*5:せめて結婚して、出世してれば良かったのだが。。。

*6:三河の機織機やオートバイメーカーの作った4つ輪には知り合いの手前上乗れなかったのは仕方無いな。。。私にとっては悲しい勘違いとしか言いようが無いが、もう紙にそう書いてあるのだから仕方が無い

*7:つまり、二村自信の事に過ぎない

*8:だって、ジョギングで身体を絞っている所を目撃される訳にはいかない人間なのだから

*9:多分1冊10円にしかなんないな